日本の神社を訪れた外国人旅行者にとって「どうやって参拝すればいいのか」は大きな疑問のひとつかもしれません。多くの観光案内では「二礼二拍手一礼(にれい・にはくしゅ・いちれい)」という作法が紹介されます。
これはつまり、2回お辞儀をし、2回手を叩き、最後にもう一度お辞儀をするというものです。
しかし実は、この作法は「全国共通の伝統」ではありません。
■ 「二礼二拍手一礼」はいつ決まったのか?
この「二礼二拍手一礼」という作法が「正式な参拝方法」として広まったのは、実は近代に入ってからのことです。
明治時代、日本は急速な近代化と富国強兵を進める中で、精神的な統一を図るために「国家神道」という体制が整えられました。その中で、天皇を中心とする統一的な礼式が必要とされ、伊勢神宮の作法を基準として「二礼二拍手一礼」が全国の神社に普及していきました。
つまりこの作法は、古来からの慣習というよりも、明治以降に定められた標準化された礼法なのです。
実はこのように神道、神社といっても、国家神道と、その前の神道で異なります。
■ 昔は神社ごとに違っていた
それ以前の日本では、神社ごとに地域の伝統や神職の教えに基づいた独自の参拝作法が存在していました。
たとえば:
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出雲大社では、現在でも「二礼四拍手一礼」が正式な作法です。
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大分県の宇佐神宮でも、独自の形式を伝えています。
ほとんどの神社は、国家神道になったときに統一の流れにのまれましたが、一部の神社ではこのようにこれまで古来の信仰を守っている神社もあります。
■ どう参拝するのが正解?
とはいえ、昨今9割9分で、二礼二拍手一礼(にれい・にはくしゅ・いちれい)で大丈夫です。
礼や拍手には、言葉の代わりに心を伝えるリズムがあります。
決まった動作をなぞることで、ふだんとは違う心の静けさに気づけることも。
そんな身体感覚で楽しんでみるのもいいかもしれません。

出雲大社のカフェで。大国主命様のラテアート